死にぞこないの青(乙一)/幻冬舎文庫

 裏表紙の紹介文に「飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは・・・」とあるけれど、これは違うと思う。 マサオくんがちょっとばかり気が弱かったために誤解が生じて、結果的に嘘をついた、ずるをした、 ということになってしまったのだ。また、その誤解というのが、 「クラス内であまり親しくない人に声をかけるのは勇気がいるから、その人が嫌いなわけではないけれど、 自分から話しかけるのはできれば避けたい」と思ってしまうタイプの人にとっては(わたしもそういうタイプだと思うし、 マサオくんと同じ小学4年生の頃は、今よりずっとその傾向も強かった)、充分に起こり得ると思えてしまう、リアルなものなのだ。  しかも、それがきっかけで始まる、先生によるマサオくんいじめが、それはそれはいやーなものなのだ。 人格を根こそぎ否定する、生まれてきたことを心の底から後悔させる、執拗で陰湿なもの。


 僕はみんなより劣っています。ナメクジと同じです。(中略) みんなよりも地位は低いです。生きている価値はありません。僕はバカです。死んだほうがましです。 根暗でスポーツもできないので友達なんてできません。とにかく劣っているので僕はみんなのように生きていくことはできません。 それらの言葉をそれぞれ二十回ずつ、先生の命令で唱えさせられた。(本文P.81より)


 この、放課後の理科室でのシーンを読んだ時、わたしは死にたくなった。 死にたいなんて軽々しく使ってはいけないと思うけれど、他にぴったりくる言葉が見つからない。


 このように、いじめの場面では散々落ち込んでしまう。アオというマサオの幻覚らしい恐ろしい外見の少年が現れて、 事態が動いていく章では、どうなることかとはらはらするし、怖くもなる。 けれど、ラストには救いが用意されていてすごく好きだ。最後の2行は(ここに引用するのは控えるけれど) マサオくんと自分との共通点を見つけて、 読んでいてマサオくんへのいじめに打ちのめされてしまうような人へ向けられたものだと勝手に思っている。


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