砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)/富士見ミステリー文庫

 初っ端の「新聞記事より抜粋」で、海野藻屑という名の13歳の女の子のバラバラ遺体が発見されたことが示されます。そしてその遺体の第一発見者が、同い年の女の子だったことも。

 語り手は山田なぎさという、「田舎に住んでて貧乏で未来は暗黒で父親はいなくて頼りの兄は絶賛ひきこもり中(P.94)」の女の子。なぎさは、自立するために生きていくために必要な「実弾」にしか関わらないと決めています。物語は、そのなぎさのクラスに海野藻屑が転校してきてからの1ヶ月と、なぎさが「見つけなければいけない物体」を見つけるために、黙々と歩くようすが交互に描かれます。

 藻屑はなぎさが言うところの、生活していく力である「実弾」とは正反対の、嘘話を繰り広げ奇行を繰り返すという「砂糖菓子の弾丸」を撃ち続けている女の子です。

 誰が藻屑を殺したのか――などの諸々の疑問は、早々に答えがわかるようになっています。それでも物語は失速することなく、残酷な結末に向けて進んでいきます。

 なぎさが藻屑を「友達だ」と思う気持ちに混ざった「自己嫌悪にも似た嫌悪感」に「歪んだ自意識」。藻屑が言った、「好きって絶望だよね」という言葉のほんとうの意味。


 実は魔法が使えて、自分に意地悪をする大人をこらしめることができるのだ、というようなある種の「救い」は、この物語にはまったくないのでした。13歳は13歳で、親に庇護される存在でしかなくて、どこへも行けない。


 「現代の病魔」と呼ばれるような問題も出てくるけれど、それらはこの物語のリアリティを高める働きをしているわけではないように感じられました。「青春暗黒ミステリー」と銘打たれていますが、わたしにとってこの物語はファンタジーです。現実にもありえそうだと身につまされるような感覚はないけれど、築かれているのはあくまで虚構の世界だとわかったうえで、絶望させられるような物語。


読了日:2005/12/23 →日記での言及ページ


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