狐笛のかなた(上橋菜穂子)/理論社

 呪者に命を握られ「使い魔」にされた霊狐・野火は、初めて主の命で人を殺して自らも傷を負った日、 人の思いを感じ取る「聞き耳」の才を持つ少女・小夜に助けられます。 子狐の野火を抱えた小夜は、森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸と出逢って・・・。

 上橋菜穂子さんの作品世界は、「作り物」という感じがあんまりしないのです。登場人物たちが確かに息づいていて、生活しているようすが伝わってくるような。  若桜野の地を巡って引き起こされた春名ノ国と湯来ノ国の争いは、それぞれに憎しみや恨みを生み出し、それがさらに悲しい思いや疑いを増やしていってしまいます。登場人物それぞれが抱えた想いに、どうしようもなく切なくなってしまいます。 「怨んでも、時はもどせません。この先を、変えるしか、わたしたちにはできない」という花乃の言葉が印象的でした。


読了日:2004/12/26


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